〜私の独断と好みだけによる推敲〜

豊かな田園風景の広がる長野県のある町に、善福寺という古い寺がある。面倒見のよい篤志家として知られていた先代住職が亡くなってしばらく後、ジェニファという少女がホームステイにやってくる。先代が生前に受け入れることを決めていた少女だが、残された家族には青天のへきれき。寺には修行中の若い僧が数人いるし、少々訳ありの少年もひとりあずかっているのだ。だが彼女は寺の一人娘・郁代とすぐにうち解け、住職夫妻や周囲の人々も彼女を自然に受け入れる。でもそんな人の輪の中から、ひとりだけ外れているのが、寺であずかっている例の少年だ。川辺の畑をひとりで黙々と耕し、近所の人たちから「少年A」と呼ばれる彼に、ジェニファは興味を持つのだが……。

これは抜粋。
並行して描かれている住職一家のコミカルな物語部分には触れず(ちょっと言うなら、ジェニファはもっと明るく描いても良かったかも…)
導入部分の隆志は必要ないのでは。
蝉の声と隆志の愁いを帯びた表情、その中を妖精のように現れるピンクのワンピース…
これだけで、隆志の長いナレーションに匹敵する効果があったのに…。

心を閉ざしていた少年に、ジェニファは何度も声をかける。
自分の殻に閉じこもることだけで、自分を保っている少年はジェニファと口をきこうとはしない。
そんなある日、
「何もわかっていないくせに!」と、自分の犯した罪を話し始める隆志。
何も言わずに少年の話を聞くジェニファ…。
ジェニファは自分もまた孤独な施設に育った事、そこでジェニファという名前をつけられた事などを話す。
「名前がないと、皆に呼んでもらえない…寂しいよ」
少年は何かが心の中を通り過ぎていくように感じる。
そして、ぶっきらぼうに答える。「隆志だ」

この映画の中で一番大切な部分。
ここにめいっぱい時間をかけてほしい。
じっくりと描かれているようだが、それでも駆け足過ぎるように思う…。
もう少し隆志の心の動きを繊細にたどってほしかった。

隆志が、ジェニファの言葉に心を動かされて自分の名前を答えるシーン…すごくよかった。隆志の表情で思いが痛いほど伝わってきた。

このことがあってから、隆志は少しづつジェニファを受け入れ始め、やがて二人は恋に落ちる。
隆志が集めていた片方だけの蝶の羽に自分が持っている羽を合せるジェニファ。
対の羽ができた時に、二人の気持ちも一つになった…。

寺への階段を登る毎日の隆志の表情と足取りに心の変化を表現させていて面白かった。
ずっとそこにあった花も、以前は色褪せて眼にも入らなかったのに、
足を止めて花に触れる隆志は、すごく優しい顔になっているね。


うまく育たなかったとうもろこしを投げ捨てる隆志、
それを拾って食べるジェニファ。「甘いよ、隆志がつくったんだもの」と…。
そんなジェニファを隆志は思わず抱きしめるのだが…

ジェニファが消えるということに、どうしても納得がいかない。
消えなくても充分に二人の切ないラブストーリーは描けるはず。
其々の悲しみに寄り添いながら、静かに愛情を深めていく…美しく描ききれるはずの物語が
抱きしめられると消えるという設定によって陳腐なおとぎ話になってしまった。
隆志が昔聞いた涙石の物語、二人の夏の音の思い出…
これらは、二人の愛が深まる過程での大切な素材。
でも、やっぱり急ぎすぎている。
隆志の心の変化も、あまりの急展開の中では多少の違和感さえ覚える。

しかし、ある日、近くで起きた事件の参考人(?)として、隆志はパトカーで連れて行かれてしまう。
ジェニファは悲しみに沈んだ日々を過ごすことになる。

少年Aの呼び方もそうだが、
保護観察中の少年への扱いがどうにも疑問だ。

参拝客の話を聞いて「おみくじ」の意味を知ったジェニファは、はぎれを集めては隆志の畑の作物に結ぶようになった。
隆志が早く戻ってきますように。
隆志の悲しみが深くなりませんように。
それを知った寺の人々もジェニファのはぎれ集めに協力するようになる。

ここは面白悲しくて…いいね。

隆志が警察(?)から戻った日、
立ち寄った畑で彼が目にしたものは…
一面の作物に結ばれたの色とりどりの御神籤…

それは少年の傷ついた心を充分に癒してくれた。
そしてジェニファ…

「自分は涙石の物語の中の少女なの」というジェニファ。
少女が少年にキスをすると、二人とも消えてしまう。
「二人とも消えるんだね」
隆志はジェニファを抱きしめてキスをする。

そして、
色とりどりのはぎれで描かれた
LOVEという文字が風に揺れる畑の中心で、
隆志だけが取り残される。
「なんでジェニファだけ消えるんだよ!」

2年後、隆志がバスで寺を後にする。
バスの外に放った対の蝶の羽が、一匹の蝶になって飛び立っていく。

++完++

ちょっと高倉健の「幸福の黄色いハンカチ」みたいなイメージだけど、
畑のLOVEにはちょっと泣けた。
最後のキスはやっぱり長すぎ&熱すぎ。

お伽話の少年は後悔してしまったから人間に戻れず少女と一緒に消えてしまったけど、
隆志は後悔しなかったから【人間】に戻れた…そういう意味なのだろうか?

このストーリーを違和感なく味わうには、
ジェニファは妖精だった・・・という設定はどうだろうか。
ジェニファの姿が見えていたのは隆志や寺の人たちだけだった…という。

現実の中のありえない不思議は、コメディの中でなら生きるけど、
こういうシリアスな物語ではちぐはぐさだけが残る。
夢物語のように描かれれば、不思議な美しさは余韻として残る。

何事もなかったかのようにいつもの寺の生活が再び訪れる。
みんな夢をみていたのか…。
でも、誰もが温かい感触と、今までと明らかに違う自分に気が付いている。

そんなイメージでまとめてみると、すんなりと受け止められるのだけど…。



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